本研究の目的は,人々がどのようなことをいじめだと認識するのか,その言語的表現に注目して,いじめの判断基準について,教職志向の違いを考慮しながら,明らかにすることであった。まず,文部科学省が発出した文書から,同省がいじめとの判断を示した架空事例を用いて,「ばかにされたり責められたり」と表現された部分に当てはまる具体的な言語的表現を,大学生25人から収集した。次に,そこで整理された60項目を用いて,教育学部で小学校専修の学生60名,同中学校専修の学生122名,非教育学部の学生60名を対象に,当該事例において各項目がいじめにあたるか否かの判断を求めたところ,クラスター分析により,『排斥』『不快』『非難』『激励』のカテゴリーが得られた。分散分析の結果,その重大性は,『排斥』>『不快』>『非難』>『激励』の順であり,『排斥』『不快』では「小学校専修で教職志向」が「中学校専修で教職志向」よりも有意に高くいじめと捉えることが明らかとなり,校種による発達課題と指導困難の課題から考察された。また『排斥』『不快』について,尊厳と人権を守る観点から考察された。